アグラからヴァラナシへと出発する日。
移動は夕方からなので、少し遠出をしてファテープルシークリーへ行く事にした。
宿で聞くと、バスで行くのが一番良さそうなので、とりあえずバス停へ。
たむろする人に聞きながら、ファテープルシークリーへ行くバスを探す。
どうやらこのバスが目的地へと運んでくれるようだ。
果たしてこのバスはちゃんと走るのだろうか。そう思いながらも乗り込んで、すぐに出発。
バスの周りには大量のバイクと自転車が。
野良牛もこの距離でごろごろ横を通っていく。
バスに揺られる事数十分、近くにいたインド人二人に話しかけられ、仲良くなった。
道中で出会う人との交流は旅の一つの楽しみだ。
彼らは高速道路に乗る前に降りていった。
バスは高速道路に乗り、目的地へと加速していく。
高速道路と言っても、インターチェンジこそあれど、防音壁がある訳でもなく、のどかな風景の中を広めの道が続いていく。
アスファルト舗装が悪いところも多々あり、快適な道のりではなかったが、一時間ほどで無事到着。
荒涼とした平原に突如として現れるファテープル・シークリー。
城壁に囲まれた町には城門を通り抜けて入っていく。
麦のような穀物を団子状にした不思議な食べ物を作っている出店。やはりカレー色。
複雑な路地の中、歩み進めるとモスクが見えてきた。
ファテープルシークリーは、皇帝の世継ぎ誕生を祝して、アグラから遷都して作られた都市なのだが、深刻な水不足によりわずか14年で放棄された、いわば幻の都とも言える場所。
一瞬の栄光が凝縮された爆発的なエネルギーを秘めた場所とも言えるかもしれない。
ほとんどの建築が赤砂岩により作られ、水不足が象徴する乾燥と灼熱のイメージを体現している。
これだけの植物をここで維持していたことでも、都が大きく栄えていたことが忍ばれる。
ディテールを見ると、バナキュラー建築とイスラム建築が融合されているようだ。
それでも 陰に入ると少しひんやりとするから不思議なものだ。
現地人でもこの暑さには参るようで、そこここでうたた寝する人々がいた。
さすがに暑さにもバテてきたので、いったんアグラに戻る事にした。
帰りのバスは1時間に1本あるかどうか。
乗り遅れないよう、急ぎ足でバス停へと戻った。
そこで、私たちを乗せて帰るバスを見て愕然とした。
ガラスは割れ、座席は朽ち果て、もはや廃車にしか見えない代物。
これで高速道路を走るのか。
無事アグラに戻れるのだろうかはなはだ疑問だ。
どうなることやら。