2013.06.23 ツェルマットの朝は快晴。
軽く朝食を済ませ、マッターホルンミュージアム(Matterhorn Museum)や、マッターホルンを最初に登頂したエドワード・ウィンパーを讃えた石碑などを見ながら、駅まで町歩き。
ツェルマット駅(Zermatt Bahnhof)と隣接して、ゴルナーグラート鉄道(Gornergratbahn)の駅はある。スイスで最も美しい展望台とも言われるゴルナーグラートへと続く鉄道だ。
チケットを駅で購入していざ乗車!
最初は緩やかに登っていくが、次第に傾斜がきつくなり、きついところでは、明らかに車体が斜めになっている事が見て分かる。車両が滑り落ちないよう、途中から線路の間にギアを噛ませる3本目のレールが現れ、車両の下面に設置されているギアと噛み合わせることで逆行を防いでいる。
20分も揺られると、かなり登ってくる。
車両の右側に座ると見えてくるマッターホルン。
さらに登ると、雪を纏ったアルプス山脈が現れる!
終着駅ゴルナーグラートは、少し吹雪いていた。
薄着で来た事を少し反省しながら、雲が過ぎるのを待つ。
山の天気は変わりやすいと言うけれど、数分で景色がどんどん変わることを実感する。
ほどなく雲一つない青空が現れ、と思えば新たに雲が流れてくる。
一瞬一瞬で違った顔を見せるアルプスの山々。
雄大な自然があまりに素晴らしく、ただ見るだけでは満足できなくなり、急遽一つ手前の駅まで歩いて降りる事にした。この判断は後に非常に後悔することになるのだが。。。
360°大自然に囲まれたアルプス山脈の中を薄着の普段着で歩き始める。
まぁ、それはそれは見事な景色の連続。
興奮ぎみなテンションに乗せられるようにズンズン進んで行く。
最初は登山する人が廻りにちらほらといたのだが、いつの間にか辺りに人影がなくなっていた。
ただただ大自然の中にぽつんと存在している自分たちに気づく。
はっぱを掛けるように、ルートを示す標識の間隔が広がって行き、標識見つからない。
「はたしてこの方向で合っているのだろうか」という不安がよぎる。
すでにゴルナーグラートを出発してから3時間以上経ち、夕刻の時間が次第に近づいてきた。
道らしき道も消滅していき、戻るにも同じ道を戻れる自信も無く、脚を濡らしながら小川を超えたり、脚を取られながらも氷河の雪の上を進んだり、もはや軽い気持ちのハイキングではない。
徐々にこみ上げてくる「恐怖」の感情と葛藤しながら、16:00になってもルートの手がかりがなければ、思い切って引き返そうと心の中で思いながら、それでも進むしかなかった。引き返すにも勇気がいる。。。
途中で見た羊の群れに少し勇気づけられた。
15:30頃、向かう遠くの方から登ってくる登山者が見えた時、体に血が巡り生きた心地がした。すれ違い様に道を聞くと、もう1時間くらいで駅が見えるとのこと。進路も正しかった。
「助かった。。。」
「そんな格好で降りて来たの?」
「そう」
「どこから?」
「ゴルナーグラートから」
「えっ!!よく無事に降りて来られたね。軌跡だよ!!」
「I think so, too…」
「Good luck!!」
「Thank you!! and good luck to you, too!」
駅が近づくにつれ人の気配も増え、空にはパラグライダーの姿を確認。
太陽がまぶしい!!
そして16:30、リッフェッルアルプ駅(Riffelalp)に到着。
一駅だけ歩いて降りるはずが、3駅も降りて来たことになる。
そりゃ時間もかかるはずだ。。。
山歩きをする時、きちんと服装と装備を整えることが重要であることを改めて認識する貴重な体験となり、また大いに反省することとなった。
こんなことをしていたら命がいくつあっても足りない。
ゴルナーグラート鉄道で、ツェルマットへ戻り、預けていた荷物を引き取り、フィスプ(Visp)経由でインターラーケンへ(Interlaken)と向かった。
19:00、インターラーケン到着。
まだ明るいけれど、宿にチェックインして荷物を置いたとたん、どっと疲れが吹き出した。
夕食を軽く済ませ町歩きもそこそこに、その日のうちに就寝したのだった。