2013.06.21 クールを発つ日、出発前にもう一つクールのズントー建築へ。
その建築は、クール駅のインフォメーションセンターで鍵を借りて、自分で中に入るシステム。
なのでインフォメーションセンターがOPENするAM8:00に合せて、AM7:45に宿を出た。
町は仕事に向かう人たちの車がすでにたくさん走っている。
センターで用紙に記入し、鍵を受け取り目的の建築、ローマ時代遺跡のシェルター(Shelters for Roman Ruins)へと歩いて向かうこと大凡10分。
名前の通り、遺跡を保存するために造られたシェルター。
遺跡の形に忠実に配置された3つの四角形は、外部からの侵入者や、雨から遺跡を守りながら、風や光を程よくコントロールするため、表層は木製ルーバーで構成されている。
入り口は、建築から突き出した形状で、内部を見学する通路が延長されたように表現されている。
内部は、大きな四角のトップライトから光が差し込み、明るい空間が広がる。
因に万一鍵が借りられずとも、外から窓を覗くことで、なんとなく雰囲気は見れるようになっている。
シェルター見学後、クールの町を頭に焼き付けるようにぶらぶらと町を徘徊し駅へと戻る。
そして鉄道に乗り込み、大自然の風景を眺めながら次のズントー建築へ。
スンヴィッツ駅(Sumvitg-Cumpadials)は、氷河急行が停車しない無人駅。
駅周辺も、目立った建物はなく、大自然そのもの。
クールから次の町へと荷物を持っての移動途中なので、どこかに荷物を預けたいのだが、ロッカーを探してもまったく見当たらず。
駅のそばにある唯一のお店の喫茶店で店主に相談したら、荷物を預かってくれた。とても助かる。
身軽になったところで、のんびりと山道を登って行く。
道の途中でときどきでてくる標識を頼りに、ゆったりした時間が流れること一時間ほど。
たまにすれ違う村の人に確認しながら、ようやく遠くの方に目的の建築が小さく見えた。
ピーター・ズントー設計のサンベネディクト教会。
午前に見学した遺跡のシェルターと似た形状の入口。
扉も格子と金物のディテールまで綿密に計算されている。
この地方の伝統技法である木板を重ねる外壁が、木の葉状の平面を持つこの建物をなんとなく風景に溶け込む役目を果たしている。
接写すると、よりその素材感の醸し出す風合いが分かる。
中はシンプルかつモダン。
構造と意匠を両立させるデザインが、モダンでありながらも力強い印象を与えているように感じる。
照明もズントーによりデザインされ、空間に身を置く事で目に入る全てのモノ隅々にまで神経が注がれていることが分かる。
ズントーの設計観に浸ることのできる、至福の時間がそこにはあった。
小一時間の山登りの疲れは、どこかにいってしまう。
そうは言っても、日が暮れるまでに下山しなければ。
次の目的地もズントー建築なのだから。
山から流れる清流で一息つきながら、来た道を戻りSumvitg-Cumpadials駅で待つ事、30分。
また鉄道に乗り込み、イランツ駅(Ilanz)まで景色を眺めながら揺られること30分。
イランツでヴァルス(Vals)行きバスに乗り換え、渓谷の細い山道を大きなバスでさらに30分。
到着したのは、今日の宿でもある温泉施設テルメヴァルス(Therme Vals)。
かれこれ15年来ずっと見たかったこの建築。
本や写真を見ながら想像を膨らませてきたが、実際は想像以上。
温泉スパなので、建築好きでなくとも是非オススメできる場所。
建築の大部分が地下に埋められ、人口1000人ほどの村ヴァルスの雄大な風景の一部と化している。
使われている60,000とも言われている石は、全てこの地域で産出されたもの。
施設内のレストランでディナーに舌鼓を打ち、夕方、夜、朝と三度スパを利用。
ここでゆっくり過ごす至福の時間のおかげで、これまでの旅の疲れが吹き飛ぶ。
夜はぐっすりと夢心地。