2013.06.19 クール(Chur)は快晴。
早朝、ベルニナ線の列車に乗り一駅隣りのトゥージス(Thusis)へ移動。普通列車には自転車専用の車両があって、皆々愛車と共に目的地まで移動する。なんだかスイスらしい。
トゥージスは美しい自然の中をハイキングできるスポット。
バスに乗り換え、山の中へ向かった。
行き先は、ヴィアマーラシュルフト(Viamala Schlucht)。
ヴィアはロマンシュ語で「悪い」、シュルフトはドイツ語で「渓谷、大峡谷」の意。相当に険しい大自然が広がる場所のため、多くの命がなくなられたのだろうか。
バス停からの眺めはこんな感じ。
ここから渓谷沿いを降りて行く。
たくさんのハイカーに混じって大迫力の峡谷を満喫。
最初は皆同じ道を歩んでいたけれど、本当の目的地はハイカーの方々とは別で、途中から二人だけになった。
渓流から一旦外れて、気持ちのいい山道を歩いて行く。
空気がおいしい!
でも人っ気がなくて道があっているか不安になる。
15分ほど進むと、辺りが開け渓流に再合流、そしてそこで見つけた目的地。
サランサス橋(Punt da Suransuns)。ユルグ・コンツェット(Jürg Conzett)というスイス人構造家による設計。
日本の構造家、満田衛資氏が雑誌にコラムを掲載されていて、その文を読んで以来どうしても見てみたくなった橋。ようやくご対面。
基本構造は橋の底裏を通るたった15mmの鉄の平たい板4枚だけ。その鉄の板を両岸のコンクリートの巨大な塊で固定および引っ張っている。
手摺も繊細なスケール材を使い、極めて透明感の高い橋。
渡ってみると、やっぱりちょっと揺れるのはご愛嬌といったところかな。
どのくらいの時間、橋を眺めていただろうか。
ずっといるわけにもいかず、渋々橋を離れて、また山道を歩く。
歩く事20分ほど。
もう一つの橋、トラヴァルジナ歩道橋(Zweiter Traversinersteg)到着。
同じくユルグ・コンツェット設計による木製吊橋。
全長56m、高低差が22mある橋を渡るのは大迫力。
橋のデザインは、構造の考え方や、力学的作用の処理方法を意匠的な表現に直結させやすいように思う。実際に構造架構を積極的に意匠デザインに取り入れた作品が多いように感じるし、またそれが魅力でもある。
この橋を支える肝は上部にあるコンクリートベース。
木製の橋桁が軽いのだろう。思ったよりも塊は小さいように感じられた。
橋を数往復しながら、体験を身体に焼き付ける。
そしてヴィアマーラ渓谷の山歩きを楽しみながら、バスを経由しトゥージス駅からベルニナ線の列車に乗って、ダヴォス(Davos)へ移動。
途中ダヴォスグレイシア駅辺りは、有名なスキー場もあり車窓からの景色が良い!
そしてダヴォスの町へ。
世界経済フォーラム、通称「ダヴォス会議」が行われることで有名な山々に囲まれたリゾートの町、ダヴォス。
ダヴォスのメインロードを歩きながら、キルヒナー美術館を目指す。
ダボス・キルヒナー美術館(Museo Kirchner Davos)は、スイス人のギゴン氏とアメリカ人のゴヤー氏の設計による。画家エルンスト・ルードヴィッヒ・キルヒナー(Ernst Ludwig Kirchner)が創作活動を行ったアトリエの近くに建つこの美術館。名前の通り、世界で最もたくさんのキルヒナー作品を所蔵し、その数はおよそ1400点。
展示空間として、四角いガラスの箱が4つ配置され、箱と箱の間が動線というシンプルだけれど洗練された建築。キルヒナー自身も、ドイツはドレスデン工科大学で建築を学んだ後、芸術の世界に足を踏み入れただけに、なんとなくシンクロする部分もあるように感じられる。
6月のさわやかな季節なだけに、美術館の廻りにも一面花が咲き広がっていた。
美術館から10分もないところに、ギゴン&ゴヤー作品が後二つある。
ダヴォス・メンテナンス工場(Maintenance Workshop in Davos)とスポーツセンター・ダヴォス(Sports center Davos)は共に、外壁のテクスチャーに木板を使った建築。
同じ1990年代後半に竣工したもので、考え方も共通するところが見られる。
一通りダヴォスを満喫した後、ベースにしているクールへと戻ったのだった。