2013.06.12 この旅の大きな目的地の一つ、イタリアの巨匠カルロ・スカルパの作品、カステルベッキオ美術館(museo di castelvecchio)があるヴェローナの朝は快晴だった。
街中心部自体はとても小さく、徒歩でも十分見て回れる。まず向かったのは、逸る気持ちを抑えきれず、とにかく美術館へ。
アディジェ川(Adige)に架かるスカリジェロ橋(Ponte Scaligero)の麓にそれはある。
カステルベッキオ美術館は、castel「城」、vecchio「古い」の意味そのままに古城を改修した、スカルパ設計の代表的な美術館。歴史を感じさせる趣をそのまま継承しつつ、美術館としての機能が自然な形で落し込まれている。
城の中庭を使ったアプローチを通り、エントランスへ。
広大な敷地の中、様々な用途が複雑に配置された城という建築ジャンルに対して、美術館の順路は至るところにある中庭や屋上などの外と城内を行き来し、古城をあますところなく堪能できるよう綿密な動線計画がなされ、飽きる事がない。
あらゆるところが細部まで計算されつくされたディテールたちで溢れ、緊張感すら漂う雰囲気に魅了され続ける、まさに建築ワールドが広がっている。
ディテールを挙げ始めるときりがない。ここまで新旧が見事に融合すると、建築自体が完璧に芸術へと昇華できる事が直感的に理解できる。
時間を忘れさせてくれる圧倒的な体験をさせてもらった。
後ろ髪を引かれるような想いが残るほど、印象的な建築との出会いを名残惜しみながら、スカリジェロ橋を渡り美術館を後にした。ヴェローナへ行かれる方は是非!
その後、地元のスーパーで具材を物色し、手作りサンドウィッチを公園で頬張った後、次の美術館へ。
ローマ時代と中世時代の地下遺跡を改修した美術館、スカービ・ スカリージェリ(Centro fotografia scavi scaligeri)はシニョーリ広場(Piazza Signori)の脇にある。トリビュナーレの中庭(Cortile del Tribunale)にあるガラスのトップライトからは、地下遺跡を覗く事が出来る。
この時は、スイス人写真家ルネ・ブリ(René Burri)の展覧会を行っていたが、それがまたとても刺激的だった。後で調べたところ、20世紀の戦争や紛争、指導者や芸術家など、時代や世相を反映させた写真を取り続けたそうで、面白半分にみれるような作品ではなく、考えさせられる作品ばかりだった。
この美術館の側にはスカリジェレ家の霊廟(Arche Scaligeri)があり、帰りがけちょこっと見学。塀はスカリジェレ家の紋章の形を用いてできている。
最後はヴェローナと言えばロミオとジュリエットの舞台となった街。ジュリエットの家(Casa di Giulietta)があるということで行ってみる事に。
路地を通り抜けたところがジュリエットの家の中庭。やっぱり有名なのか観光客がたくさん。
この中庭と、ちょこんと出っ張っている小さなバルコニーとの間で、胸キュンの恋物語は創られた。物語にあやかりたいカップルたちが残していく鍵が、所狭しと壁を埋め尽くしている。
最後はほっこりした気分になってヴェローナの一日が過ぎていった。
日本とは、歴史との関わり方や考え方がまったく異なる文化を持つイタリアの一面を肌で感じ、学ぶことの多い一日だった。