AM 10:00 アーメダバード駅に到着。人口12億人の国だけあって、人で溢れている。
だいたい前日に持参したタブレット端末のiPadでトリップアドバイザーやホステルワールドなどのサイトを見て宿を予約をするようになった。宿の地図をスクリーンショットで保存しておけば、インターネットに接続できなくてもどこでも見る事ができて、とても便利。でもこんな駅前でiPadを出そうものなら、ワーっと人が集まってくる。
「どこ行くんだい。俺のオートリキシャに乗っていけよ」
「どこでもいくぜ。俺のに乗ってきな」あっちからもこっちからも声がかかる。
このような状況に対してこれまでの旅路から学んだことがあった。それは向こうから声をかけてきた人は信じないということ。ほとんどがだまされるか法外な金額を要求される。なので気の毒だが、この人たちは相手にしない。しかし今回は状況が違った。
「なぜ乗らないんだ。行きたいところに連れてってやるって言ってるだろ。ほら来いよ」
「乗らないから諦めてくれよ」
「心配するな。大丈夫だ。あそこのオートリキシャが俺のだ。来いよ。」
一人の男がかなりしつこい。仕方なく逃げるように早足で信用出来そうな運転手を探す。
それでもついてくる。
「いいかげん乗れよ。おい」
終いには怒りだす。ちょっとやばくないか。これ。
優しそうな運転手を見つけた。こちらから声をかける。
「この宿まで行ってほしいんだ。わかる?」
「ああ、乗るか?」
「よし、じゃあ行こう」
私たちがオートリキシャに乗り込むと、ついてきた男も一緒に乗り込もうとする。
そして違う場所に行くように運転手に言っている。
「おいおい何言ってるんだ。降りてくれ」
「いいから俺も乗せろ」
どこまでも付いてくる気のようだ。
「この男が乗るなら、私たちは降りるぞ。いいか?」運転手に聞く。するとあわてて運転手が男に言った。
「あんた降りてくれ。この客を乗せて行くから」
それでも乗り込んで来ようとする。
「降りてくれ!邪魔するな!」
運転手が大きな声で言い放つ。どうやら運転手も普通じゃない事を察知したようだ。
乗り込んで来ようとする男を振り払うようにオートリキシャが発進する。
一瞬よろけた男は、すぐさま後ろに並んでいる違うオートリキシャに飛び乗り追いかけてきた。
運転手は男を振り切ろうと、車やリキシャ、人や牛などでごったがえす道を必死にすり抜けていく。なんともすばらしいドライブテクニックだ。そこは交通ルールが無いに等しいインド。手が汗ばむカーチェイスにアドリナレンがほとばしる。
なんだこれは。。。映画「トランスポーター」のジェイソン・ステイサムが頭を過る。
ほどなく、男を撒くことに成功。運転手もほっとしているよう。よかった。
「ありがとう」
「変な奴には気をつけや!」運転手はいい人だった。
数分すると宿に到着。一息ついてから街へ。
目的地となる建築について、日本で住所は調べてある。住所と地図を頼りに、道行く人に幾度となく行き方を聞きながら、その建築を探す。そして今日も一つ目を見つけた。
コルビュジェ設計、繊維業会館 1956年竣工。
だが入れない。
門が閉まっている。無情にも間に合わなかったのだ。
開館時間は13:00まで。着いたのが13:15。そして今日は土曜日。
次に開くのは二日後の月曜日だ。
門の横の警備員がいる。
「おーい、建物を見るだけだから入れてくれない?」
「今日はもう時間外だ。二日後の月曜またおいで」
「それでは間に合わない。もうアーメダバードにいないんだ。少し建築をみるだけだから」
「だめだ」
「頼むよ」
「無理だ」
「じゃあ責任者と話をさせてくれないか?」
「んん」
「見るだけだからいいかって聞いてみてよ」
「仕方ないな。ちょっと待ってろよ」
しばらく門の外で待っていると、
「よかったな、入れよ。スロープを上がって右側の部屋に責任者がいるから行きな」
門を開けてくれた。
「おお、ありがとう」
言ってみるもんだな。
言われた通りスロープを上がって右側の部屋をノック。
「あなたたちは建築を見に来たのですか?」
「そうです。見るだけでいいので」
「わかりました。いいでしょう。15分だけにしてください。撮影は構いません。ただ見学した後、いくらか寄付をするか、ここでパンフレットやポストカードなどを買ってもらいたい。強制はしませんが・・・。」
そうきたか。
「わかりました。ありがとうございます。見学しながら考えます」
ということで
コルビュジェが提唱した ”ドミノシステム” による軽やかな3層構造に、ブリーズソレイユが繊細な陰影を持たらしている。”Dom-ino”はラテン語 “Dom-ino” 家の意 “Domus” と革新性の意 “Innovatio” を掛け合わせたコルビュジェの造語であり、それまで組積造の歴史を歩んできたヨーロッパにおいて、鉄筋コンクリートの床、柱、階段からなる構造のこと。これにより平面計画はより大きな自由を獲得した。
見学後、最初にあった寄付か購入する話、コルビュジェのパンフレットを購入し、ここを後にした。