007 インド建築の旅(4)

チャンディーガル2日目の朝は雨が降っていた。インドに来て初めての雨。毎日40度近くなる気温が少しは和らぐかもしれないという淡い期待感。

0019-1 雨の朝

徒歩移動を諦めて、オートリキシャでスクナ湖へ。湖畔に建つヨットクラブからコルビュジエツアーを再開。

0019-2 スクナ湖

スクナ湖に着いたとき、雨はすでに止んでいた。

0019-3 スクナ湖のヨットクラブ

ヨットクラブは中庭を中心にレストランや事務棟を配置したプラン。開口部の桟の形状がコルビュジェを感じさせてくれる。中には本人直筆のスケッチや絵画が飾られている。

0019-4 スクナ湖のヨットクラブ

ヨットクラブで穏やかなひとときを過ごし、セクター10にあるチャンディーガル美術学校へ。

0020-1 美術学校

見ただけでそれと分かるファサード。教室や作業室では多くの学生が創作活動に没頭していた。楽しそうだ。

0020-3 美術学校

存在感のあるコンクリートの天井と教室。

0020-2 美術学校

学ぶ姿勢から刺激を受けた後、チャンディーガル美術館へ。コルビュジェが設計した美術館は世界中で3カ所ある。一つは東京上野にある国立西洋美術館。後の二つはインドにあり、ここがその一つなのだ。

0021-1 チャンディーガル美術館

コルビュジエが提唱した “Les 5 points d’une architecture nouvelle”、訳すと「新しい建築の5つの要素」。その5つの要素の一つ、「ピロティ」を持つ美術館だが、メンテナンスが悪いこともあって廃墟の様相を呈していた。建築にメンテナンスは必須であることを感じる。隣に建つ美術館事務棟ではコルビュジエの展示をしていて、実際の図面やスケッチなどが見れる。

0021-2 チャンディーガル美術館事務棟

こちらも5つの要素の一つ「屋上庭園」の応用、最上階が外部化し心地よい空間を生み出している。スロープもコルビュジェ建築の一つの特徴だ。

こうして一人の建築家の建築を続けて見ると、否が応でも共通するものを感じる。それはこれらの建築が、確固たる理念に基づき究極の完成形を試行錯誤し続けたプロセスの積み重ねとして生まれてきたからだろう。また昨今よく聞く「ブランディング」という観点から考えると、コルビュジェのイメージを分かりやすく多くの人に伝えるという意味で、作品に明確な特徴を与えることは極めて戦略的だとも言える。逆のことを言えば、一人の人間がそれまでの自分と全く違うモノを生み出すことが非常に難しいということなのだろう。常に違う新しいものを生み出す必要性があるのかというのは別問題として。

一人の巨匠の一連の流れを、残された建築空間に身を置いていくという作業の繰り返しによって体感する。今後の設計活動を行う上で、想像していた以上に大きなヒントをくれそうだ。

そんな想いを抱きながら、チャンディーガルを後にする。

一旦列車でデリーに戻り、申請していたバングラデシュのビザを受け取ってからさらに夜行列車でアーメダバードへと向かうのだ。

再び、デリーのバングラデシュ大使館へ。

ビザ受取窓口は大使館の裏口のような所にある。パチンコ屋の景品交換所のような雰囲気があるその場所に、旅行業者らしき人や家族連れなど多種多様な人が並んでいる。並んでいるというより群がっていると言った方が正しいかもしれない。順番はあってないようなもの。我先にと押し合っているところ、負けじと押し合いに参加する。窓口までなんとかたどり着いたのはよかったが、申請書控えを見せるとビザを発行できないと言われる。なぜだ。理由を聞くとどうも申請書のビザ発行日数の欄に一カ所記入漏れがあるからだという。いやいやいやいやいや。「 003 インド旅記(2)」で詳しく記さなかったが、大使館で申請書を提出する際、ビザ申請受付の大使館員から散々にあーでもない、こーでもないと言われ申請書を幾度となく修正、訂正したのだ。あげくの果てにはこの書類は2部必要だからコピーを取って来いといい、コピーを取ってくると、後から写真付の書類もコピーがいるからまたコピーを取ってこいと言う。コピーを取るには2kmほど離れた印刷屋に行かなくてはならないにも関わらず。そんな極めて不親切な対応に我慢しながら念には念をいれて不備がない事を確認した上で申請したのだ。しかもバングラデシュに入国するにはどうしてもビザが必要だ。そして数時間後には次の街へ移動してしまい、もうデリーには戻って来ない。窓口で粘った。なんとかしないと。日本人らしき夫婦が大使館員ともめているの見たまわりの人たちも最初は早くしてくれよと言わんばかりだったが、不憫に思ったのか次第に応援に回ってくれ、大使館員を一緒に説得してくれた人もいた。

だが、結局ビザは発行されなかった。諦める他なかった。一緒に説得してくれた人に礼を伝え、デリー駅へと戻ることにした。しぶしぶ今回はバングラデシュに行くことをやめる事にした。

夜行列車に乗り込み、次もコルビュジェ建築が残る街アーメダバードへと向かう。シャタブディエキスプレスと並んで最も速い列車の一つ、ラージダニーエキスプレス。席にはいくつかグレードがあり、A2と呼ばれる上から二つ目の席がこれ。ここで1泊、約16時間の移動。

0022-1 ラージダニー列車

列車で提供される食事はいつも通りカレー。もちろん乗車券に含まれている。インドでは宗教の影響もありベジタリアンが多い。提供されるカレーも肉入りかベジタリアンか選べるようになっている。因にこれはチキンカレー。

0022-2 ラージダニー列車

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です