2013.06.29 バーゼル三日目は雨。
雨でも楽しめるバーゼル市内の美術館巡りをすることに。
AM 9:00、トラムに乗ってFondation Beyeler駅で降りるとすぐに、レンゾ・ピアノ(Renzo Piano)設計、バイエラー財団美術館(Foundation Beyeler)に到着。朝一番でも、チケット売場はすでに年配方が大勢並んでいた。スイス国内で最も入場者数の多い美術館としても知られているらしいが、確かに混んでいる。
この美術館は絵画を中心に後期印象派からアンディ・ウォーホールなど現代アートまでを展示しているが、大きな窓から自然光を取り入れているのが特徴の一つ。公園・池・開口・美術空間の流れがとても自然で、明るい展示室はとても心地良い。バイエラー氏のコレクション一つ一つのための空間が用意された計画だと言われて納得する。
周囲の喧噪から切り離された落ち着いた空間は、一日のんびりと過ごす贅沢な空間でもあった。
結果、思っていたよりも長く滞在してしまった。
尚、2016年にバイエラー財団美術館は増築計画を発表し、コンペの結果ピーター・ズントーが勝利している。機会があれば是非また行きたい。
さて。
バイエラー財団美術館を後にして、トラムに乗って移動。
移動途中に車窓からヘルツォーク&ド・ムロン(Herzog & de Meuron:以下H&dM)設計のシグナルボックス(Signal Box)を発見。バーゼルSBB駅の信号所の機能を持つ。総銅板張りの素材感はイメージしていた通り。スリット幅と角度という単純な操作のみで、大きな表情と変化を生み出すH&dMの素材とサーフェスの扱いはとても参考にしている。
ゆっくり見れなかったが、あきらかに存在感を放っていた。
さて、次もH&dM設計のシャラウガー・ローレンツ財団美術館(Schaulager)。
主に現代アートを展示・保存を行っているが、内部撮影に対してとても厳しかった。カメラを持っているだけで館内スタッフに注意された。残念。
H&dMらしく、土の荒々しい素材感がそのまま感じられるサーフェスで構成されている。
パンチングメタルを凹凸加工して作られた扉は、土壁のその凹凸と呼応するようにデザインされたものだろうか。細部まで行き届いたディテールに学ぶ。
一通りシャウラガーの展示を見て回った後、次もH&dM設計の風刺漫画ミュージアム(Karikatur & Cartoon Museum)へ。トラムで最寄り駅まで移動して、街歩きをしながら目的地を探す。
途中にあった教会に寄ったりしながら。
到着後、早速中へ。
風刺漫画ミュージアムは、15世紀から残る古い住宅の中庭に増築を施した小さな博物館。H&dMとしては、おとなしい作品。何となく惹かれた階段と手摺。
ドイツ語は理解できないけれど、漫画だけあって描写を追うだけでもなんとなく楽しめる。
また日本の漫画やアニメも多く展示されていて、ここでも改めて日本のカルチャーがグローバルに浸透しつつあることを実感する。
こちらもすべての展示を見て回ってから後にした。
バーゼルの街は、都会と自然の距離が近くて、とても暮らしやすそう。街を歩いていると、常に新たな発見があっていつまでも飽きが来ない。
そしてH&dM設計のバーゼル民族博物館(Museum der Kulturen Basel)。
普通の集合住宅の入り口から中庭に入って行くと、その中に美術館の入り口はある。
残念ながら、到着が開館時間に間に合わず、外をぐるっと回って見るだけにして、展示の見学は明日に持ち越し。
外観からでも十分、H&dMらしい素材感を前面に出したデザインが見て取れる。
施設系の建築は閉館する時間だけれど、日が落ちるまでのもう少し他の建築を見て回る事に。
道の途中で見つけた売店。閉店後は板戸を閉めてコンパクトに収まる。さりげなく機能と意匠が融合されたデザインがそこここにあるのは、やはり文化やアートの成熟度を感じる。
これもH&dM設計のロセッティ医薬研究所(Institute for Hospital Pharmaceuticals)。
プリントガラスをファサードに利用する建築の走りの一つ。出隅はガラスのトメ加工。
これまた通りすがりのバーゼル大学カレッジハウス(Universitat Basel Kollegienhaus)。
石貼りの外壁とRC造の屋根と梁を意匠に使った外観がとても心地よく感じた。
日没前、今日最後の建築巡りもH&dM設計のシュッツェンマット通りの集合住宅(Apartment and Commercial Building Schutzenmattstrasse)。
想像以上に鉄の格子戸に重量感があって、迫力があった。
そして開閉窓が実際にも利用されていることが嬉しい。
宿への帰り、通りすがりにシェッツエンマットと似たアパートメントを発見。
H&dMの影響を受けているように見えるのは気のせいだろうか。
H&dMが拠点とする街バーゼルを歩き回った一日だった。